羊飼いの礼拝
- 日付
- 説教
- 吉田謙 牧師
8 その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。9 すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。10 天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。11 今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。12 あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」
ルカによる福音書 2章8節-20節
千里摂理教会の日曜礼拝は10時30分から始まります。この礼拝は誰でも参加できます。クリスチャンでなくとも構いません。不安な方は一度教会にお問い合わせください。
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羊飼いたちは、ユダヤ社会の中では見捨てられた存在でした。しかし、その羊飼いたちに、御子イエス・キリストの誕生の知らせが真っ先に告げ知らされたのでした。しかも、世界人類のためにというただ単なる一般論ではなくて、他でもないあなたのために神様は救い主を遣わされた、と天使は羊飼いたちに告げたのです。この喜びの知らせを聞いた羊飼いたちは、この時、すべてを打ち捨てて、急いで見に行った、と言われています。これまで羊飼いたちは、仕事が忙しくて安息日を守ることが出来ずにいました。しかし、そうなったのは、ただ仕事が忙しかったからだけではありません。彼らは、これまで安息日は自分たちには無縁のものだ、と考えていたのです。けれども、この喜びは自分たちのためのものであった。自分たちもこの喜びに招かれていると知った時、彼らの行動は自然と変わりました。忙しかった仕事に何とか目処をつけ、イエス様に会いに行ったのです。それほど彼らの喜びは大きかった、と言うことでしょう。
ある国で内乱が起き、多くの人々が虐殺されました。その虐殺からかろうじて免れた人々が難民キャンプに連れて来られたそうです。その中に幼い子どもが一人いました。両親を目の前で殴り殺され、逃げる途中も多くの人々が殺されるのを見ながら、その子は命からがら逃げてきました。大変なショックと心の傷を負い、難民キャンプに辿り着いた時には、もうその子は生きる気力を失っていたそうです。幸い、そのキャンプには医療器具も食料も充実していて、その子は食べることに不自由しませんでした。怪我と病気も完全に治療してもらうことが出来ました。けれども、どんなに栄養を与えても、その子の体は拒否反応を起こして受け付けず、日に日にその子は痩せ衰えていきました。とうとう医者もさじを投げ、「この子が死ぬのは、もう時間の問題だろう」と誰もが思っていた、と言います。ところが、そのキャンプで奉仕していたボランテイアの青年の一人が、その子を抱き上げると、朝から晩まで、ずっと抱きしめ、耳元でささやき、子守唄を歌い、顔や身体をやさしく撫でてやったそうです。何一つ反応を示さないその子を、青年は来る日も来る日も、ずっと一緒にいて、やさしく語りかけ、子守唄を歌い、しっかりと抱きしめたのでした。するとどうでしょう。それまで顔がこわばって、にこりともしなかったその子が、ある日、かすかに笑うようになった、と言うのです。そして、あれほど拒絶していた栄養も受け付けるようになり、それからというもの、みるみるうちに健康を回復していったのでした。
何故、この子は助かったのでしょうか。この子自身が「生きたい」と思ったからです。大切な家族を目の前で殺され、絶望感にさいなまれる中で、何の希望もなく、誰からも愛されず、必要とされていないと思った時に、この子は本能的に自分の命を閉じようとしたのです。けれども、一人の青年が懸命にこの子に愛を注いだ時に、この子は自分の意志で「生きたい」と思うようになった。これは将に愛の奇跡でありましょう。人間は、ただ食物や栄養だけで生きているのではありません。自分を愛し、あるがままで受け入れてくれる存在がどうしても必要なのです。愛が必要なのであります。
私たちには弱さがあり、欠けがあり、破れがあります。神様から見れば、私たちは霊的に瀕死の状態にあるのかもしれません。もう何をやっても無駄である。神様がさじを投げたとしても何も文句が言えないような私たちです。けれども、神様は「そんなあなたでは愛せない」とは言われません。「生きて欲しい」と願い、瀕死の状態にあった子供を、ただひたすら抱きしめたあの青年のように、神様は私たちを、欠けや弱さや破れをもったまんまで抱きしめて下さる。愛して下さる。受け入れて下さる。「滅んではいけない。私がこんなにも愛しているではないか。私の愛を受けとるように。命を受けとるように。永遠の命を受けとるように」と、私たちを死から命へと招いて下さるのです。このことの第一歩が、あのクリスマスの日に起こりました。神様は私たちを救うために、ご自分が最も大切にしておられる独り子イエス・キリストを、この世に送って下さったのです。これがクリスマスの物語です。そして、その良き知らせが、羊飼いたちに真っ先に届けられたのでした。羊飼いたちは、「あなたがたのために救い主がお生まれになった」というお告げを天使から聞いたのです。どんなに嬉しかったことでしょう。私たちも、この羊飼いたちと同じように、決して強制されてではなく、この大きな喜びをしっかりと受けとめ、それに突き動かされて、喜んで、晴れ晴れと、それぞれの信仰生活に励んでいきたいと思います。