日曜朝の礼拝「神の愛」

宗教改革者ルターは、この3章16節の御言葉を「小さな福音書」と呼びました。まさに、キリストの福音が、この一節に凝縮されている、と言うのです。本当にその通りだと思います。福音の中心は、言うまでも無く神様の愛です。主なる神様は、ご自分の独り子をお与えになり、そのことを通して、ご自分がいかに私たちのことを愛しておられるかを明らかにされたのでした。

　ここでいう「世」という言葉は、ヨハネによる福音書においては、「神様に敵対する人間たち」という意味で使われています。私たちは、既に1章10節のところで、「キリストがこの世に来られたのに、世はキリストを認めなかった」という御言葉を読みました。世というのは、そういう言葉です。神様に背を向け、神様の行為を踏みにじるのです。けれども、神様はそういう世を愛して下さった、と今日の御言葉は告げています。私たちは、そういう世の一員として、神様から愛されているのです。決して自分だけが立派な人間で、信心深いから愛されているわけではありません。困った時だけ神様にお願いし、日常生活においては簡単に神様を忘れてしまう。自分の生活に、いちいち神様が干渉して欲しくない、と思っている私たちです。客観的に見ると、まことに身勝手としか言いようがないですね。けれども、そんな私たちを、神様は独り子を与えるほどの愛で、愛し抜いて下さるのです。これは本当に驚くべき神様の恵みではないかと思います。　21節のところには、真理を行う者が光であるイエス様のもとに来る、と言われています。では、真理を行う者とは、いったいどういうことでしょうか。これは、「神様が教えて下さる真理に基づいて生きる人」という意味です。あるいは、「事実に基づいて行動する人」とも言い換えることが出来るでしょう。真理を行うというのは、事実に基づいて行動することなのです。

　私たちが罪人であること。そして、このまま放っておけば、永遠の滅びに至ってしまうこと。これは紛れもない事実です。そして、この罪人の私を神様は愛しておられる。その愛のゆえに神様は、罪人である私たちを、ご自分の独り子の十字架によって赦し、新しく生かそうとしておられる。これも事実です。真理を行うというのは、この全体の事実をその通りに受け入れて生きる、ということです。自分が罪人であることを素直に認めつつ、その罪人の私を、神様が愛しておられることを受け入れながら生きるのです。その愛のゆえに、神様は御子を十字架に送り、私たちの罪を全部御子に背負わせて下さいました。この御子の十字架の贖いによって私たちの罪は全部赦されたのです。この事実を受けとめて生きるのです。「真理を行う者は光のもとにやって来る」というのは、「この生き方に入った者は喜んで光のもとにやって来る」という意味でしょう。自らの罪を認め、罪の赦しを願う者は、皆、喜んでキリストのもとにやって来るのです。

　神様は、ご自分の独り子をこの世に送り、十字架につけてまでも、この世界を救いたい、と願われました。それほどまでに、この世を愛されたのです。この天における事実、真理が、あの十字架のイエス・キリストを通して明らかにされました。あの十字架のイエス・キリストを見れば、神様がどれほどこの世界を愛しておられるか、どれほど私たちのことを愛しておられるかが、一目瞭然なのです。そして、このことが分かってくれば、この世界の本当の姿、また私たちの本当の姿が見えてくるのではないかと思います。

　この世界には沢山の辛いことや悲しいことがあります。新聞やテレビのニュースを見ると、本当に目を覆いたくなるような報道が、毎日毎日繰り返されています。特に、今回のコロナ騒ぎで、世界の醜さが、本当に顕著になってきたのではないかと思います。この世界は、どうしようもなく自己中心的で、醜く、絶望的ではないか、と思いたくなります。けれども聖書は、「神は、その独り子を十字架に送るほどに、世を愛された！」と語るのです。自分が住んでいるこの世界は、とんでもない世界であって、堕落しきっている。もうどうにもならない。神様にも見捨てられてしまった。もう諦めるしかない。ある人たちには、そのようにしてしか見えていないのかも知れません。けれども、本当はそうではないのです。神様は、この世界を諦めておられません。今もこの世界を愛して愛して止まないのです。

　あるいは、自分自身を見つめる時に、私たちは、しばしば自分が本当に弱く、ちっぽけな存在であることを思い知らされます。なすべき事が出来ず、してはならないことをしてしまう。本当に罪に汚(けが)れた人間です。自分の内側を正直に見つめるならば、なんと汚(けが)れた人間なのか、なんと卑怯な人間なのか、と嫌になってしまう。けれども、イエス様を知るならば、この私についても、全く新しいことが分かってきます。この私という存在は、神様がご自分の独り子を十字架につけてまでも救いたいと思われるほどに、愛すべき存在であり、高価で尊いのです。イエス様の十字架によって、私たちの罪は全て赦され、私たちはもう責められるところが何一つない存在です。こうしてイエス様のことが分かってくると、世界についても、また自分自身についても、私たちは全く新しい目で見ることが出来るようになるのです。

　神様は、その独り子をお与えになったほどに、「世」を愛されました。神様に敵対する世です。神様の愛を踏みにじる世であります。しかし、この「世」を神様は決してお見捨てになりません。今も、なお愛しておられます。私たちもかつては、滅びの道を歩んでいました。けれども、今は、本当に虫のいい仕方で救いの道を歩むことが出来ています。これは、私たちだけに起こることではありません。全ての人に開かれている道なのです。この希望のもとに、今、滅びの道を急いでいる愛する者たちの救いのために、諦めずに祈り続けたいと思います。